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未払い賃金請求|労働トラブル

未払い賃金請求の労働トラブルについて、この記事では解説しています。会社から給料2か月分が支払われていない。倒産する前になんとか回収したいという悩みにお答えします。

Q 未払い賃金を回収するためには、まず初めに何をすればいいですか?

会社が賃金を払わない理由は、色々と考えられますが、中小企業の中には、賃金の不払いや支払い遅延を大したことと考えていない会社も少なくありません。まず、会社に対し、賃金の不払いが重大なことであることを理解してもらうために、内容証明郵便等を利用して、未払い賃金の請求書を送りましょう。

賃金の未払いが発生すると、給与支給日の翌日から、遅延損害金が発生します。勤務継続中であれば年6%となり、退職後であれば年14.6%となりますので、賃金の未払いは、会社にとっては大きな負担となるはずです。

未払い賃金の遅延損害金
勤務継続中 年6%
退職後 年14.6%

弁護士にご依頼いただければ、ご自身が会社との間で直接交渉せずに、弁護士が会社と冷静に協議した上で、迅速に未払い賃金が支払われるケースも少なくありません。

手続きの流れ
内容証明郵便の送付(未払い賃金請求書)
条件面の交渉
和解、未払い賃金の支払い

Q 社長から、ない袖は振れないので給料は我慢してくれと言われました。諦めるべきでしょうか?

諦めるのはまだ早いです。給料は、あなたが頑張って働いた対価ですので、粘り強く回収しましょう。会社の資金繰りが厳しく、任意に支払いを受けられない場合でも、強制的に回収する方法があります。

差押え強制執行という言葉をご存じでしょうか?給料の未払いがあり、強制的に回収したい場合には、会社の資産に対し、差押え等の強制執行手続を行うことになります。

しかし、給料の未払いがあるだけでは、ただちに強制執行することはできません。ざっくり言いますと、給料の未払いが確かに存在することを公的に証明する書類(債務名義)が必要となります。たとえば、主なものとして、以下のものがあります。

債務名義
確定判決・仮執行宣言付き判決
裁判上の和解調書
仮執行宣言付き支払い督促
公正証書(執行受諾文言付き)

上記のうち、判決を得るためには、裁判を起こさなければなりません。裁判は手続も大変で時間もかかりますよね。

今回のケースのように、社長が未払い賃金の存在は認めているが、お金がないので払えないという場合には、社長と一緒に公証役場へ行き、公正証書の作成に協力してもらえるのが最も簡便かつスピーディーですので、おすすめです。

公正証書の作成にあたっては、分割払いの定めや、一回でも支払いを怠ると一括払いしなければならないという定めを加えます。また、社長に連帯保証人となってもらえる場合もあり、非常に柔軟な解決が可能です。

そして、公正証書には、必ず、「強制執行に服する」という一文を加えることを忘れないようにしましょう。この一文があって初めて、公正証書を強制執行に使用することができます。

公正証書を作成しても、全く給料が払われない場合には、次の段階の強制執行に進みます。強制執行の対象になり得る資産として、以下のものがあります。

銀行預金や取引先に対する債権が差し押さえられると、会社の通常業務に支障を来たしますので、効果は大きいといえますね。

資産の種類 効果
銀行預金
取引先に対する売掛債権
現金
機械等の価値のある動産
不動産

ただし、社長との交渉や、公正証書の作成、強制執行などを実際に行うには、法律知識とともに、実務経験が必要不可欠です。

弁護士にご相談いただければ、これらの面倒な手続をワンストップでご提供することが可能です。そして、うまくいけば、未払いの給料の全額を早期に回収できます。

Q 会社が倒産してしまいましたが、給料が支払われていません。回収する方法はありますか?

会社が破産手続を開始した場合には、給料は、破産管財人を通じて、法律上の優先順位に従って支払われます。一般的に、破産前3か月分の給料は、最も優先順位が高い種類の債権となります。したがって、会社に給料を支払えるだけの資産があれば、3か月分の給料は支払われる可能性が高いといえます。

また、倒産した会社から給料が支払われない場合に、国が給料の8割分を給付してくれる未払い賃金の立替払制度があります。

立替払を受けることができる人は、以下の条件を満たす人です。

(1) 1年以上事業を行っていた労災保険適用事業の
(2) 労働者で
(3) 倒産に伴い、倒産手続開始の申立てなどの6か月前から2年の間に退職し
(4) 未払賃金が2万円以上ある

(3)の倒産には、破産や民事再生などの法的倒産手続だけでなく、中小企業が、事業活動を停止し、再開の見込みなく、支払い能力がないことを労働基準監督署長が認定した場合も含まれます。

中小企業の範囲は以下のとおりです。

業種 従業員数または資本金額
一般産業 300人以下又は3億円以下
卸売業 100人以下又は1億円以下
サービス業 100人以下又は5千万円以下
小売業(飲食店含む。) 50人以下又は5千万円以下

なお、立替払いされる金額については、以下のとおり、退職日の年齢に応じた限度額があります。

退職日の年齢 未払賃金の限度額 立替払いの上限額(限度額の8割)
45歳以上 370万円 296万円
30歳以上45歳未満 220万円 176万円
30歳未満 110万円 88万円

事実上倒産しているが、正式な倒産手続をとっていない会社にいて、未払い賃金がある方は、ぜひ早期に弁護士にご相談ください。

最近、事実上の倒産について、立替払いの認定のための審査が厳格化しているようです。弁護士にお任せいただければ、そのような審査に対応して、立替払いの認定を取得し、未払い賃金の大半を取り戻すことができます。