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上司のパワハラ|労働トラブル

労働トラブルについて、この記事では解説しています。上司から叱責を受けたが、これは明らかにパワハラではないかとお悩みではないですか?パワハラか指導かの線引きは意外と難しいのです。

Q パワーハラスメントとはどういう意味ですか?

パワーハラスメントという言葉は、近年ハラスメント被害の一つの類型として登場しました。

法律上、パワハラについて明確に定義したものは見当たりません。しかし、以下のとおり、複数の組織で定義がなされており、それらを比較すると、「パワハラ」といわれる行為に共通する要素が分かります。

パワハラの定義例
例1 職務上の地位又は職場内の優位性を背景にして、本来の業務の適正な範囲を超えて、継続的に相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより、就労者に身体的・精神的苦痛を与える、又は就業環境を悪化させる
(クオレ・シー・キューブ)
例2 職場において、職務上の地位や影響力に基づき、相手の人格や尊厳を侵害する言動を行うことにより、その人や周囲の人に身体的・精神的な苦痛を与え、その就業環境を悪化させること
(21世紀職業財団)
例3 職務上の権限や上下関係、職場における人間関係等に伴う権力を利用し、業務や指導などの適正な範囲を超えて行われる強制や嫌がらせなどの迷惑行為
(全国労働安全衛生センター連絡会議)

要するに、「上司の部下に対する優位な立場を利用して、業務の範囲を超えて、人格を侵害し、職場環境を悪化させる行為」が、パワハラの本質であるといえます。

Q 上司からパワハラを受けましたが、会社からはパワハラでなく業務指導の一環だと言われました。

パワハラの裁判では、パワハラか業務指導の一環かがよく争われます。上司としては、業務指導の一環として、指導・叱責したつもりでも、受け取った部下がパワハラだと感じることに、トラブルの本質があります。

つまり、パワハラのトラブルの大半は、上司と部下との間のコミュニケーションの不足・行き違いが原因となっているのです。

消費者庁が平成25年に行ったアンケート調査によると、各企業に設置されている内部通報窓口に寄せられる相談のうち、約4割が「人間関係」を内容とするものであったとのことです。それだけ、日本の職場において、パワハラをはじめとする職場内コミュニケーションが根深い問題であるということでしょう。

パワハラか業務指導の一環かの大まかな傾向は、以下のとおり整理できます。

パワハラ 業務指導の一環
目的 不当 正当
暴行 暴行あり 暴行なし
頻度 反復・継続 単発
場所 他の社員に見える場所で 限られた社員だけがいる場所で
叱責後のフォロー フォローなし フォローあり
発言内容 人格を否定する発言あり 業務に関連する発言のみ

実際の裁判では、各要素の一つを満たす、または満たさないからパワハラになるというものではなく、全ての要素を総合的に考慮して、労働者の人格権を侵害するかどうかによって、判断しています。

パワハラを受けたのではないかとお悩みの場合、ぜひ一度弁護士にご相談ください。弁護士が裁判例の傾向を踏まえた的確なアドバイスを行います。

Q パワハラ被害の慰謝料額の相場はどのようになっていますか?

パワハラによる慰謝料の金額は、個別の事案ごとに、千差万別であり、相場というものは基本的にはありません。パワハラの内容から、客観的にみて、労働者がどの程度辛い思いをするかによって、個々の裁判官が個別に金額を決めています。

過去の事例ごとの慰謝料額は以下のものが挙げられます。

事案の内容 慰謝料額
退職させる意図で、勤続33年で課長経験のある従業員に対し、総務の受付業務をさせた事案 100万円
4年半の間、一切仕事を与えず、7年間、自宅研修をさせ、その間、昇給も一切なかった事案 600万円
問題行動を行った従業員に対し、大声を出して中傷するような表現で叱責したが、従業員側もふてくされた態度で叱責を誘発した事案 10万円
上司が「意欲がないやる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います」などと記載された電子メールを本人とその職場の同僚に送信した事案 5万円

パワハラを受けた場合、会社に対する損害賠償請求が可能です。

しかし、上記事案から分かるとおり、慰謝料だけの請求にとどまる場合は、よほど酷いパワハラを受けたのではない限り、高額な賠償を受けるのは難しいでしょう。

パワハラを受けたとお悩みの場合は、一度弁護士にご相談いただければ、過去の裁判例の傾向から、的確にアドバイスするなど、あなたを全力でサポートします。