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成年後見|遺産相続

遺産相続と成年後見について、この記事では解説しています。相続人の中に、認知症や精神病にかかっている人がいる場合、成年後見制度の利用を検討しましょう。

Q 成年後見制度とはどのような制度ですか?

成年後見制度は、認知症、知的障害、その他の精神障害が原因で、判断能力が不十分な人を保護するための制度になります。たとえば、認知症等の人が行った不利な契約を取り消したりすることが可能となります。

確かに、民法上、錯誤・詐欺等によって契約をした場合、契約を取消すこと等ができます。しかし、民事裁判で、錯誤・詐欺等を主張・立証できないリスクがあります。そこで、予め、成年後見制度を利用していれば、契約を取消すこと等ができるように制度がつくられました。

成年後見制度を利用することで、判断能力が不十分なことに付け込まれることを回避することが可能となります。

Q 成年後見制度には、どのような類型がありますか?

法定の成年後見制度には、後見(こうけん)、補佐(ほさ)、補助(ほじょ)の制度があります。

いずれの制度も、判断能力が不十分な人を保護するためのものです。また、家庭裁判所を利用することになります。しかし、後見・補佐・補助の制度は、想定されている判断能力の程度が異なります。また、そのため、各制度の保護の内容も違います。

表1 後見・補佐・補助制度の比較表
判断応力の程度 同意が必要な行為(=同意なければ取消可) 後見人の代理権 資格制制限
後見 判断能力が欠けているのが通常な状態 全て(日常生活に関する行為を除く) 全ての法律行為 医師、弁護士等の資格、公務員等の地位を喪失
補佐 判断能力が著しく不十分な状態 一部 申立により、一部の法律行為 医師、弁護士等の資格、公務員等の地位を喪失
補助 判断能力が不十分な状態 申請により一部 申立により、一部の法律行為 なし
※ 後見・補佐・補助になっても、選挙権、被選挙権の制限はありません。
表2 後見・補佐・補助制度の同意が必要な行為の比較表
後見 補佐 補助
後見人の同意が必要な行為(=同意なければ取消可能) ①元本の受領等 全て同意必要(日常生活に関する行為を除く)
②借金・保証等
③重要財産の処分
④訴訟行為
⑤贈与・和解等
⑥相続放棄・遺産分割等
⑦贈与を拒否等
⑧新築等の大修繕
⑨短期でない賃貸借
⑩その他の行為(日常生活に関する行為を除く) ×
※○:同意必要 △:審判で追加されると同意必要 ×:同意不要

Q 遺産相続において、成年後見制度は関係しますか?

遺産相続の場面において、成年後見制度は関係することがあります。

複数人の相続人がいる場合、産分割手続が必要となります。遺産分割手続において、相続人の中に、判断能力が不十分な人がいることがあります。そのような場合、成年後見制度の利用が必要となります。

遺産分割手続は、重要な財産の契約にも等しいものです。なぜなら、親族間の話合いとは言え、遺産の帰属を決める手続だからです。そのため、遺産分割手続では、判断能力が不十分な人の保護のため、成年後見制度を利用することが必要となります。また、後日、意思能力がなかったということで遺産分割手続が無効となることがあります。遺産分割手続の無効を回避するためにも、成年後見制度の利用が必要となります。